ダーク、フラット、バイアス:実際に何を直しているのか
キャリブレーションフレームの平易な説明。それぞれが何を取り除き、何枚必要で、いつ撮るのが晴れた夜の無駄になるのか。
天体写真のチュートリアルはどれも、ダーク、フラット、バイアスを撮るように言います。それぞれが何を取り除くのかを教えてくれるものはほとんどないので、大半の人は迷信のように三つ全部撮るか、よく分からないまま三つ全部飛ばすかです。どちらも間違いですが、間違いの度合いは同じではありません。三つのうち一つは他の二つよりはるかに重要で、しかもそれは初心者が普通最初に手をつけるものではありません。
どのフレームにも三つの誤差がある
カメラのセンサーは、当たった光をそのまま報告するわけではありません。当たった光に一連の誤差を足したものを報告し、各キャリブレーションフレームはそのうち特定の一つを狙います。
熱が加わる。 各ピクセルは真っ暗でも熱エネルギーから電荷を蓄積し、その速度はおよそ 6〜7 °C ごとに倍になります。300 秒露光では、空とは無関係の信号がはっきり積み上がります。しかも速度はピクセルごとに違い、隣より格段に熱いピクセルもあります。色付きの粒はそこから来ます。
周辺減光とホコリ。 光学系は画面の隅より中央に多くの光を届け、差はたいてい 20〜40 % です。センサー窓やフィルターのホコリは、ぼんやりした灰色のドーナツを落とします。どちらも空にはありませんが、すべてのフレームに写っています。
オフセットがある。 ノイズがゼロで切られないよう、カメラはすべての読み値に固定の下駄を加えます。この下駄も完全に均一ではなく、淡いパターンを含みます。
ダークは一つ目を、フラットは二つ目を、バイアスは三つ目を直します。
重要なのはフラット
キャリブレーションフレームを一種類しか撮らないなら、フラットを撮ってください。大半の人はその逆をしていますが、初心者にとって最も大きな画質向上になるのはフラットです。
理由は、周辺減光とホコリの影が乗算的で、しかも大きいからです。隅の 30 % の落ち込みは隅を暗くするだけでなく、ストレッチしても残り、むしろ強調されます。淡い星雲を背景から引き出すと周辺減光も引き出され、画面中央に明るい塊ができて、どんなカブリ補正でも完全には直せません。ホコリのドーナツも同じで、淡い信号を見ようとしているところに、ぼんやりした暗い輪として現れます。
これに対してダークが扱うのは、スタッキングがすでにある程度処理しているものです。十分な枚数を平均すれば、ランダムな熱ノイズは枚数の平方根に従って下がります。ホットピクセルは平均では消えませんが、統計的に対処できます。これについては後で説明します。
フラットは撮るのも一番簡単で、晴れた夜の時間もほとんど使いません。暗闇は要りません。望遠鏡を均一に照らされた面(薄明の空、後ろにランプを置いて開口部にかぶせた白い T シャツ、白画面を表示したタブレット)に向け、ヒストグラムがフルスケールの 3 分の 1 から半分あたりに来るよう露出します。20〜30 枚で十分です。
守るべきルールは一つです。フラットはライトと同じピント、同じ回転、同じ光学構成で撮ってください。ピントを合わせ直したりカメラを回したりするとホコリがフレームに対して動き、フラットは役に立たないどころか、間違った場所にドーナツを刻み込みます。セッションの終わりに、何も触る前に撮りましょう。
ダーク:有用だが、短時間露光では過大評価されている
ダークはシャッターを閉じた露光で、ライトと同じ時間、温度、ゲインで撮ります。これを引くと、平均的な熱信号と、どのピクセルが他より熱いかという固定パターンの両方が取り除かれます。
ダークを撮る価値があるのは、次の二つの条件のときです。
- 長時間露光。 300 秒なら熱の寄与はかなりあります。Seestar や Dwarf が撮る 10 秒では読み出しノイズを下回ることが多く、引いてもほとんど効果がありません。
- 冷却カメラ。 ダークは温度が一致して初めて役に立ちます。−10 °C に冷やした天体専用カメラなら、何か月も使い回せる再現性のあるダークが撮れます。夜の始めに 18 °C、終わりに 4 °C だったデジタル一眼ではそうはいきません。終わりに撮ったダークは、始めに撮ったフレームに合いません。
つまずきやすいのはこの最後の点です。非冷却の一眼のダーク電流は、カメラが冷えるにつれて夜の間に変わります。合っていないダークを引くと、ノイズが減るどころか増えることがあります。ノイズのあるフレームから別のノイズのあるフレームを引くうえに、熱信号もきちんと打ち消されないからです。
非冷却カメラで短いサブを撮っているなら、ダークを省くのはまったく理にかなっています。手抜きではなく、自分のデータにうまく当てはまらない補正を使わないだけです。
バイアス:たいてい省いてよいもの
バイアスフレームは、シャッターを閉じてカメラが撮れる最短の露光です。電子的なオフセットだけを捉え、他は何も捉えません。
バイアスが必要になるのは、ダークをスケーリングするとき、つまり別の露光時間で撮ったライブラリのダークを計算で調整するときです。そのためには固定オフセットと時間に依存する熱信号を分ける必要があり、それをバイアスが与えてくれます。
ライトと同じ長さで撮った一致するダークを使うなら、バイアスはすでにダークの中に含まれていて、ダークを引けばバイアスも一緒に引かれます。バイアスを別に撮っても何も足しません。
バイアスは手間がかからない(100 枚でも 1 分かからない)ので、持っておいて困ることはありません。ただ、寒空の下で撮るかどうか迷っているなら、省くのはこれです。
ホットピクセル
標準的なアドバイスが不十分なのはここです。ダークが取り除くのは、センサーが決まって生むホットピクセルです。ランダムに一枚だけに当たる宇宙線は取り除けず、ダークを一度も撮らない大勢の人にとっては何の役にも立ちません。
ホットピクセルを軽く見てはいけないのは、スタッキングでは消えないからです。(1204, 883) にホットピクセルがある 90 枚を平均すると、(1204, 883) にホットピクセルがあるスタックができます。さらにレジストレーションでフレームごとに視野が回転すると、その動かない欠陥が短い色付きの筋に引き伸ばされ、ほかは良い画像を素人っぽく見せてしまいます。
代わりに統計的に見つけることができます。難しいのは欠陥と星の区別で、どちらも小さくて明るいからです。見分けるポイントは、星は 1 ピクセルではないことです。光学系は点光源を複数のピクセルに広げるので、本物の星には明るい隣のピクセルがあります。ホットピクセルは孤立しています。各ピクセルを周囲 8 ピクセルの中央値と比べ、その 8 ピクセル同士のばらつきに応じて閾値を調整します。平坦な空にあるホットピクセルの周りではほぼ揃っていて、星の中心の周りでは星自身の裾なので大きくばらつきます。この違いで、一方を除いて他方を残せます。
Akastroid は、ダークを撮ったかどうかにかかわらず、レジストレーションの前にすべてのフレームでこれを自動で行います。8 シグマという控えめな閾値にしているのは、失敗したときの代償が釣り合わないからです。見逃したホットピクセルは小さな点で済みますが、消してしまった星の中心は何をしても取り戻せません。
実用的な答え
時間が限られていて手もかじかんでいるなら、次のようにしてください。
- フラットは必ず撮る。 セッションの終わりに、ピントに触る前に 20〜30 枚。これが一番効果があります。
- カメラが冷却式か、サブが長いならダークを撮る。 温度、ゲイン、時間を一致させる。20 枚が妥当な数です。
- ダークライブラリを作るならバイアスを撮る。 それ以外は任意です。
- 晴れた夜をキャリブレーションに使わない。 代えがきかないのはライトです。フラットは夜明けに、ダークは室内でレンズキャップをして撮れます。
キャリブレーションフレームが一枚もなくても、まずは処理してみてください。カブリを除き、ホットピクセルを掃除した未キャリブレーションのライトのスタックでも、ちゃんとした写真になります。
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